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Harunderat

○Prologue
その昔、空には大きく美しい大陸が浮いていました。
水が流れ、大地は潤い、草木は鮮やかに生い茂り、生きとし生ける者たちにとっては楽園のような大陸でした。
そこに一人の天使が降り立ちました。
「ここは何と素敵なところなのだろう」
天使はその大陸をとても気に入り、やがて住み着くようになりました。
 
しかしある日突然、その大陸の楽園は崩れてしまいました。
水は干上がり、大地は荒れ、草木は枯れ、大陸に住んでいた生き物たちも皆死んでいきました。
朽ちて行くその大陸に最後まで生き残ったのは竜でしたが、その彼らさえも大陸から姿を消し、大陸には何も残らなくなりました。
死の概念を持たない天使はただ一人その大陸に残されてしまいました。天使は寂しさに嘆き、悲しみに暮れました。
崩れゆく楽園に涙を流す天使。その悲痛な嘆きは神にまで届きました。
神は嘆く天使を憐れみ、聖なる水を黄金の杯で掬い上げると、その大陸に一滴の希望の雫を落としました。
すると大陸はたちまち青い光に包まれ、その輝きを取り戻してゆきました。
水が流れ、大地を潤し、草木を芽吹かせ、鮮やかな風景を映し出しました。
しかし、天使の悲しみは拭えませんでした。
「何故喜ばぬ」
神は問いました。
「寂しいのです」
と天使は答えました。
天使の手の中には動かなくなった小さな生き物がいました。まるで割れ物を扱うように大切に、天使は手の中の小さな存在をそっと手で包み涙を流しました。
そんな天使に神は慈悲を投げ、その小さな存在を天使の手から優しく取り上げると、天使の姿に良く似た“人”へと変えました。
神の奇跡は次々と起こり、小さな生き物たちは皆人へと姿を変えました。天使は再び多くの友に囲まれその幸せに喜び、神に尽くし切れないほどの感謝を告げました。
そして天使は自らの生涯をその大陸で過ごすことを決意し、人へと近づこうとしました。やがて天使は国を築き上げ、人と交わり、人と同じ寿命を与えられ、多くの人に見守られて死んでゆきました。
 
神により創られし大陸。
天使により創られし王国。
 
すべては、あくまでも歴史の一編に過ぎない――
 
 
――― A new generation...
 
 
 
 
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